旧道・旧トンネル・廃墟などなど、少し怖いながらも年月の重みを感じさせてくれる、ちょっと寂しい気持ちにさせてくれる美しいスポットが、好きだ。
旧道を走っていて廃校舎なんかを見かけた日には、とんでもなく心が躍る。
廃道に取り残された車も趣があって良い。
もちろん怖いよ。
幽霊は信じてないけど、人の気配がするような気がするんだもの。
それでも行きたいんだ。今はもう役目を終えたものたちが、ただ朽ちるのを待つ姿を見に。
ところが、それを台無しにしてくるものがある。それがこれ。
そう、落書き。
具体的に誰がどのような理由で描くことになったのかはわからない。
が、ひとつ心当たりがあるのが、肝試しだ。
大学生の頃、私は焼き肉屋でバイトをしていた。
同年代の学生たちが集まっているそこでは必然的にバイト同士が仲良くなり、特に夏になると毎週土曜の夜、肝試しに行くのが恒例行事となっていた。
実家住まいのメンバーがバンを出し、そこに6、7人ほどで乗り込んで夜の怖場へ向かう。
清滝トンネル、首塚、深泥池などなど、よくもまあ飽きずに行ったものである。
あの時行ったどのスポットにも共通して記憶しているのが、壁や柱への落書き、缶・花火・タバコなどのポイ捨て、意図的と思われる窓ガラスの破損などであった。
(幸いなことに比較的マイルドなメンバーが集まっていたため、我々の中ではしゃいで違法行為を働く人はいなかった。)
幽霊が出るという噂がある場所でのこれらの違法行為は、強がりたいお年頃の子供たちにとっては武勇伝のひとつなのだろう。
さて、先日旧伊勢神トンネルへ行った。
正確には伊世賀美隧道といい、旧国道153号線に組み込まれていたトンネルで、花崗岩のブロックがアーチ状に積み上げられた美しいトンネルだ。
トンネル内は気温が低くて至る所から湧水が染み出し、音の反響が激しく、ひとたび大声をあげると
「わぁん…わぁん…わぁん…わぁ…」
といった感じになる。
路面は舗装が剥げ、もはや未舗装といってもよい状態。
雰囲気あるなあ、怖いけど重み感じるなあ、
なんて思っていたら、出入り口の柱に
「落書き消しました。書かないでください」
との言葉。
よく見ると、足元には手持ち花火やたばこなどのゴミが散らばっている。
っていうかそもそもトンネルの中は青白いLEDライトが輝いていて、風情も糞もない。
なるほど。
旧伊勢神トンネル。ここは肝試しに興味がなくなってしまった私ですらどこかで聞いたことがある、超有名肝試しスポットである。
今はもうほとんど使われることのない旧道だけど、この辺りの集落に住む方は、このトンネルを現役で使っている方もいる。
恐らく真っ暗で何か出そうな雰囲気を持つトンネル、かつ名古屋からアクセスが良かったばかりにたくさんの人が集まり、治安が悪くなってしまったのだろう。
(実際にこの場所に来て怖い目に遭ったとか事故に遭ったとかいう方もいるとは思うのだけど、この記事では霊現象については別の問題とさせてほしい)
テンションが上がってやりたい放題現場を荒らす若者たちは、住民の方にとっては幽霊よりもよっぽど害のある存在であっただろう。
その結果、青白い光を放つLEDライトがつけられ、肝を試せる古びたトンネルらしい雰囲気は失われてしまったのであった。
肝試しスポットには人が集まる。
どちらかというと、元気でマナーのない人が多めに集まる。
そういうわけで、私が旧道探索する中で廃屋や廃トンネルを見つけても、絶対に場所は書かないことにしている。
どこでどういう噂がつくか、そして肝試しスポットに仕立て上げられるかわからないからね。
ちなみになんだけど、肝試し界隈の中では、落書きがない場所は本当にヤバい場所と囁かれているらしい。
言いたいことはわかる。
でもさ、私が行きたい場所も、落書きがない場所なんだよ。
怖いじゃん。やめてよ。
私も廃村や廃線跡の駅舎とか大好きですが
再訪問した時に、心無い人に室内物色されたり
落書きされてて悲しくなります。
私もInstagramやってますが
これからは場所は書かないように
気をつけたいと思います。
荒らされる前の状態をご存知なら、尚更辛いですよね。
SNSが登場したばかりの頃は誰も知らない場所を紹介するのが楽しかったのですが、今はもう、とっておきの場所は隠す時代なのかなぁと、寂しく思ってしまいます。